篭目の館
〜縛られし魂魄〜
●分類は適当です。
哺乳類
齧歯目ネズミ亜目
ハツカネズミ科
ハツカネズミ [House Mouse/Mus musculus]
リス亜目
シマリス科
シマリス [Chipmunk/Tamias sibiricus barberi ]
翼手目大翼手亜目
ケンショウコウモリ科
フランオナシケンショウコウモリ [Franquet's flying fox/Epomops franqueti]
爬虫類
有鱗目ヘビ亜目
ナミヘビ科
アオダイショウ[Japanese Green Rat Snake/Elaphe Climacophora]
アカマタ[Oriental Banded Snake/Dinodon semicarinatus ]トカゲ亜目
イグアナ科
緑星人[Green Iguana/Iguana iguana ]
ヤモリ科
トッケイオオヤモリ[Tokay Gecko/Gekko gecko]カメ目潜頸亜目リクガメ科
ヨツユビリクガメ[Central asian tortoise/Testudo horsfildi]潜頸亜目スッポン科
ニホンスッポン[Japanese Softshell/Pelodiscus sinensis]曲頸亜目ヨコクビガメ科
ヌマヨコクビガメ[Helmeted mud turtle/pelomedusa subrufa]
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哺乳類
齧歯目
今から約6000万年前に北米大陸に登場した哺乳類。
上下各一対の齧るのに適した頑丈な切歯(前歯)、物を支え掴む事が出来る前肢、
優れた環境適応能力で哺乳類中最高の1700種に及ぶ大繁栄を築く。
過去にはヒグマ級のビーバー(の類い)、バクよりでかいカパビラ(の類い)なども存在したが、
現世の齧歯類はより小型化したものが殆どである。
ネズミ亜目
齧歯目と聞いてまず連想するのが鼠であろうし、
原始的な哺乳類の代表種と思われたりもするが、
実は齧歯目の中ではもっとも進んだ存在であり、いわばパイオニア。
特にドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミという三連星は、
人類という地球上、極めて厄介な存在すら、上手く利用しているし、
他にも農耕地を根城にする鼠の類いは多い。
人類が農地を開墾し作物を貯蔵する歴史を持って以来の長いお付き合いである。
因みに欧州に黒死病を蔓延させ、
総人口の三分一を屠ったのはクマネズミ(に寄生する蚤)。
我が国でも古くから鼠は親しまれてきたようで多くの昔話に鼠が登場するし、
神話にも大国主命が素盞之男命に与えられた試練でピンチになった際、
鼠に助けられて難を逃れた話があり、
のちに大国主命が七福神の大黒様と習合した事から、
大黒様のお使いは鼠という事になっている。
大黒様は農耕神となったが、
そのお使いが農作物を失敬する鼠というのが面白い。
一方で、集団で食物を齧り尽くす鼠は悪しきイメージも付随し、
特に地理的条件から備蓄作物をやられると、
共同体全体の生命をも危うかった離島では鼠害は死活問題であり、
様々な信仰と結び付けて、これに向き合ってきた。
例えば、沖縄の久米島では虫送りの行事の際に、
「天の太陽の、夜這で出来た子の、狂った子供が、
大地の降りて、愚か者になって、精神が錯乱したあげく、長い尾の鼠になって、
稲穂を踏みにじり、祟りをするから、常世であるニライカナイに送り届けて下さい」
と、あらん限りの壮絶な罵詈雑言と共に神様に鼠がいなくなるように祈る。
逆にトカラ諸島の悪石島では周期的に訪れる爆発的な鼠の増加に苦しみ、
普段から「鼠様」と呼んで怒りを招かないようにしたという。
いずれの場合も、いかに島民が鼠害に悩み苦しめられたかが良く判る。
ハツカネズミ [House Mouse/Mus musculus]
○俗に言う家屋ネズミ御三家(熊・溝・二十日)の中で最も小型で、
主な棲息域は田畑の付近。田舎中心で定住性は低いとされている。
食性は穀物食に近い雑食。
その特徴は尿が臭いこと。これは腎臓の機能に優れ、
尿を再吸収して水分を有効利用をしているので、
結果、尿成分が濃くなることに拠る。
理屈はともかく、このツンとくる匂いは飼育種としてはデメリットで、
掃除をサボっていると目鼻に染みてくるほど。
飼育の歴史は古く、江戸時代(1789年)には
[珍玩鼠育草]なる飼育・交配マニュアル本が出されている。
1789年といえば欧州ではフランス革命が勃発して、混沌の坩堝と化していた年であるが、
流石に江戸時代の日本は呑気であったようだ。(しかも京都で出版されたらしい)
当時日本で飼育・交配されていた日本産野性マウス(Mus musculus molossinus)は
鼠好き(?)の欧州人によって欧州にも渡っており、
長きに渡り愛玩・実験用として広く飼育されていた。
その欧州でも1940年頃に絶えかけたが、デンマークではどういう訳か残っており、
1987年に欧州よりも早く絶えた母国日本の研究機間に再び戻ってきたという。
この数奇なマウスこそ俗に言う[パンダマウス]で、
件の江戸時代のマニュアル本にも[豆ぶち]なる品種名で登場している。
ただの小さいブチマウスと思いきや、深い歴史を有する日本のマウスであった訳だ。
因みに現在主流の実験用・愛玩用のマウスは欧州産系マウス(Mus musculus domesticus) だそう。
●齧歯目の飼育はマウスに始まってマウスに終わる…のではないか?と
最近(半分)本気で思ったりする。
やめよう、やめよう、と思ってもやめられない中毒的な要素すらある。
生命サイクルの短さを多産と適応力で補い、あらゆる物を齧り食す、
そんな彼等から学ぶべきものは多い。
これで尿が臭くなければ云う事無しなのであるが・・・・・。
キヌゲネズミ?あれはダメ。まんじゅうみたいだから。
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リス亜目
意外な事にリスというのは齧歯目の中でも、
もっとも原始的な部類に入るのだそうである。
しかし、そのバリエーションは多岐に渡っており、
空を滑空するモモンガやムササビ、水中を泳ぐビーバー、
草原に棲むプレーリードックなど、科は違えどリス亜目であるし、
その分布もオーストラリアとマダガスカルを除いて世界中。
侮り難し、リス。
なお我が国にもタイワンリスやシマリスなどが帰化して大変な事になっている。
特に鎌倉のタイワンリスは深刻らしく、家屋を齧る、電話線を噛み切る、
農作物を荒す、樹木の皮を剥ぐなどの巧みな破壊工作活動で社会問題にもなってる様子。
故郷を離れ、愛玩の果てに捨てられたというのに帰化するだけのド根性は見上げたもので、
逞しいと言えば逞しいのだが、やはり良い話ではない。
ペット輸入された大陸産のシマリスも在来種のいる北海道はもちろんのこと、
大阪府など本州にも帰化しているらしく、
ただでさえ少ないニホンリスの生存圏を奪いかねないので、
捨てリスは無論のこと、逃げリスにも注意したい。
シマリス(チョウセンシマリス) [Chipmunk/Tamias sibiricus barberi ]
○シマリスはペットルートに乗って毎年何万という個体数が流れるため、
本来日本に棲息していないにも関わらず馴染み深い存在である。
日本の(本州の)在来種ニホンリスなど知名度は低く、
街角でアンケートをとっても存ぜぬ方は多いであろう。
一般にシマリスと言うのはシベリアシマリスの事で、幾つかの亜種があり、
我が国ではその内、中国から集められた幾つかの亜種がペットルートで流れ、
在来種としてはエゾシマリスがいる。
このうち、エゾシマリスは獲ってはいけないので、
個人で飼育されている殆どはチュウゴクシマリスかチョウセンシマリス(と思われる)なのだが、
この二つには明確な違いがあり、見慣れてくると一発で判るんだそうな。
因みにうちのはチョウセンシマリスでした。
どういう訳だか知らないが、
世間でリスと言えば簡単に懐く存在(風の谷のナウシカのキツネリスみたいな?)であるらしく、
シマリスもまた馴れるものとして認識されているらしいが、
実はそうではなくて、最近のシマリス飼いの間では
「100%ケージの中で飼う」というのが主流になりつつある。
だいたいWCの野生動物が人間に懐く方がオカシイのだが、
そうした発想は自然や動物と実際に関わらないと湧いてこないのであろうか。
なおシマリスが唯一棲息している北海道では、
先住していたアイヌ人によれば
冬に地下に潜る習性や、貯蔵していた穀物をチョロまかされたりした事もあって、
[ウエンクル・カムイ](悪い神霊)と呼んでいた地域もあったそうである。
さて、シマリス最大の特徴と言えば“冬眠”に尽きるのではないだろうか。
リスの中で唯一冬眠するのがシマリスで、
それもたっぷりと栄養をため込んで望む冬眠ではなく、
代謝そのものを低下させて冬を乗り切る荒業に出る。
もっとも数日に一度は食事や排便の為に眼を覚ますらしい。
この冬眠のメカニズムは近年真面目に研究されており、
医学への応用も期待されているのであるから馬鹿には出来ない。
研究によるとシマリスの冬眠準備期には
[冬眠特異的蛋白質(Hibernation specific Protein)]なる物質が肝臓で作られ、
体内におけるこれの増減が冬眠を誘発するようである。
因みにこれを発見したのは日本の研究者。
凄いぞ。
●野生動物に[手乗り]などという阿呆な幻想を抱かず
無理にスキンシップを求めない限り最高にお勧めなのがコイツ。
他のポピュラーなペットと比較しても
臭いやランニングコスト、更に寿命などの点で堂々勝る…ように思える。
強いて挙げれば、大きいケージが必要なのでそれなりのスペースが要る事と、
殆どWCなので、このままのペースで輸入(消費)されれば間違いなくやばいコトになるぐらい。
幸い、繁殖はそれほど難しくはないようなので、スペースに余裕のある人はどうぞ。
飼育情報は豊富で、よく動き見てて飽きないし、
前足でコオロギを掴んで頭をクチャクチャ噛み千切るサマなど
ココロ奪われそうになる事うけあい。
翼手目
哺乳類で唯一、飛翔を実現させ成功した一群。
小翼手亜目と大翼手亜目に分けられ、
いわゆるオオコウモリは大翼手亜目の方である。
じゃぁ小翼手亜目は小さいコウモリなんだな、と思うのは早合点で、
オオコウモリと称しても植物の葉の裏に棲むようなミニマムな種類や、
小翼手亜目に属しながらも魚や小鳥、トカゲやカエル、
はては他のコウモリを襲うプレデターのような大型種もいるので注意。
分布域は翼手目全体だと離島、砂漠、北極圏にまで及び、ほぼ世界中。
その眷属は齧歯目に次いで多い900種にも達する。
日陰者のイメージが強いコウモリであるが、
その実、哺乳類の約四分の一という見事な繁栄を遂げているのである。
我が国で一番種類の多い哺乳類も、実は翼手目だったりする。
一般にコウモリ(小翼手亜目)は飛行中に超音波を出して
障害物や餌を補足している事(エコロケーション)が知られているが、
この仕組みも実に複雑であり、まだよく分かっていない事も多い。
また捕食される虫側も、黙って食われるだけでなく、
コウモリの音波を感じると、自ら「おれはマズイぞ」という音波を発信したり、
瞬間的に擬死を起こして急速落下したり、
或いはステルス戦闘機のように音波にひっかからない体構造に進化したりと、
様々な対策をとっており、コウモリ側も更にそれに対処するような戦略を編み出すなど、
言わば現代航空兵器を遥かに凌駕する空中戦が夜な夜な繰り広げられている訳である。
この辺りの生物の進化と可能性にはただただ驚く他ない。
我が国ではコウモリは[川守]に由来するという説があるが、
コウモリが水辺に浮遊する虫を目当てに川岸に多かった事に起因するのであろうか。
中国では[蝙蝠]の字で判るように福を呼ぶ縁起の良い動物であり、
その影響もあって、悪魔であるとか吸血鬼であるとかと結び付ける西洋の認識が入ってくるまでは、
不当に嫌われる事のない、蝿や蚊を食してくれる身近な存在であった。
大翼手亜目
旧大陸の熱帯・亜熱帯に棲息する大型のコウモリ約150種…であるが、
単に小さいコウモリが大きくなっただけではなく、その違いもかなり大きい。
もっとも(現在の化石上)最初に登場したのは小コウモリで5000万年前、
オオコウモリは3500年前なので、
普通なら小→大に進化したと見るべきなのだが、
様々な研究から脳神経の通り方が小コウモリより霊長目(サル)に近かったり、
翼となった前肢の指が異なる事など、
進化の過程そのものも大きく違う、いわゆる収斂進化(他人の空似)ではないか?
と言われていたりする。
謎は今だ解明されていないが、オオコウモリの顔はコウモリというより
むしろキツネザルそっくりで、霊長目からの派生というのも、あながち珍説ではないように思える。
食性も小翼手亜目のコウモリと異なり、オオコウモリは殆ど植物(果実)食である。
そのせいか、小コウモリのような超音波活動(エコロケーション)は
ルーセットオオコウモリ属を除いて行わない。
確かに飛翔中に「チキチキチキ...」と音を出しているのは確認出来たが、
ルーセットオオコウモリ属のエコロケーションは小コウモリのそれに比べて
極めて稚拙なものであるらしい。
オオコウモリは超音波ではなしに、鋭い視力と聴覚・嗅覚を頼りに、
時に数十キロに渡って夜空を自力飛翔する。
世界最大のオオコウモリ、ジャワオオコウモリなどはウィングスパンがなんと2m近く、
成人男性が両手を左右に伸ばしたよりもデカいという。
知らない人が、こんなのを見たらバケモノと思うに相違ないが、
生息地においてもオオコウモリは妖怪や精霊が化けていたり、
それらの宿る存在と考えられてる場合も多い。
素晴らしい事に我が国にもオオコウモリは棲息しており、
沖縄などの南西諸島や、小笠原諸島に数種類存在する。
しかし、オキナワオオコウモリは1870年に新種登録されてのち絶滅、
オガサワラオオコウモリも、もはや数十匹にまで減少し、
超A級の絶滅危惧種となっている。
大型で、かつ飛翔手段を持ち、
殆ど天敵と呼べる存在のいないオオコウモリでも
人間にかかっては流石に敵わず、
絶滅や個体数の減少が危惧されてるのが現状のようで、
例えばオガサワラオオコウモリはその昔、遭難して流れ付いた人々が
「島の妖怪」視するまで繁栄を遂げていたが、
明治以降の入植によって果樹園の害獣となり、あっという間に個体数を減らしたし、
観光地で名高いグァム島が属するマリアナ諸島では
マリアナオオコウモリが棲息しているが、
現地人のチャモロ人がオオコウモリを好物としているため、
グァム島のマリアナオオコウモリは殆どいなくなり、
遂に94年には全面狩猟禁止となった…が密猟も盛んである。
オオコウモリの棲息域の植物の多くは
オオコウモリによる受粉や種子散布という策をとっており、
絶滅した場合はそれらへの影響も懸念される。
特に大陸と異なり環境が限定される離島では深刻であろう。
なお、オオコウモリは人畜共通感染症の媒介者とされている地域も多く
我が国でも狂犬病・ニパウイルス感染症などの媒介を懸念して実質的輸入禁止になった。
フランオナシケンショウコウモリ [Franquet's flying fox/Epomops franqueti]
○オナシケンショウコウモリ属に属し、
コートジボアールからスーダン南部、アンゴラなどの
アフリカ大陸に分布する中型のオオコウモリ…だと思う。
確証を得ないのはインボイスに拠る事からで、
[尾無肩章蝙蝠]なのに小さい尻尾がある事であろうか。なぜ?
顔付きは凶悪なキツネザルのようであるが、その仕草はなかなかにユーモラス。
ギョロ眼で耳が大きいのは視覚と聴覚に頼って闇夜を飛翔するためで、
口がとんがっているのは餌となる果実を齧り易くするため。
この種を生後まもない個体を人工保育で育てた貴重な例があるのだが、
どういう訳か存ぜぬが寝る時は逆さにぶら下がらず、タオルに包まって普通に寝るらしい。
という事はコウモリのぶら下りは後天的な環境による学習行動なのか???(まさか)
●ペットルートに流れていたのであるから、他にも飼育している(た)人もいるのであろうが、
極端なまでに飼育情報が少なく、ある意味毎日が思考錯誤。
ただ環境適応力は、それなりに高いらしく、
個体差もあろうが、割合オープンな態度を取る事が多い。
棲息地では樹上のやや高い位置に群れているせいもあって高い所が落ち付くようである。
遂に事実上の輸入禁止措置がとられてしまったが、
もともと飼うべき生き物でもないように思えるので、それで良いのかも知れない。
飼育の魅力を聞かれて答えに詰る事も多々。
本当に好きな人が今いる個体を大事にすれば良いのであろう。
因みに当然の如く飼育生物では群を抜いて食費がかさむ。
好物はそれぞれジューシーな、メロン、カキ、モモ。
スーパーの[おつとめ品]制度がないと養っていけない。
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爬虫類
有鱗目
ヘビ亜目
爬虫類の中で進化の最先端をゆくパイオニア。
さりながら世界各民族に伝わる神話伝承の中では
まず蛇こそが原始世界を象徴する存在であるのが面白い。
日本での名称[ヘビ]はマムシの古称[ヘンビ(反鼻)]の訛ったものという説がある。
マムシの名称が蛇の総称になった背景には、その毒性による神秘性も勿論ながら、
古代において数ある蛇の中でも有毒種たるマムシをまず認識せねばならなかった、という事であろうか。
そのマムシの語源は[真の蟲]。この蟲というのは現在のムシではなく[地面を這う生き物]の意味なので、
いかにマムシが特別視されていたかが知れよう。
その他にも[クチナワ(朽縄)]、[ナガムシ(長虫)]、[カガ]、[ハバ]、[ウカ]など
時代や地方によって多くの古称・別称が存在し、
このうち[カガ]は現在でも[ヤマカガシ]の一部に残っているし、
正月に備える鏡餅も本来は[ガガミ(蛇身)]であるという説もある。
なお諏訪神社内の[長虫神社]のように蛇そのものを祀る地方も少なくない。
その(人から見て)怪奇極まる生態や、水辺によく出没する事もあって、
早い段階で水の神様、転じて農耕神と信じられた蛇は、
のちに仏教の福神である宇賀神や、七福神の弁財天とも習合している。
有名な山口県岩国の[白蛇]も、白蛇が神様のお使いであり瑞兆の証という文化土壌がないと、
ただの珍奇な地域個体群で終わるのである。
一方、蛇は畏しいもの、執念深いもの、という認識も、
自然的な蛇信仰が零落するにつれて広く普及し、
熊野詣の旅の僧・安珍に一目でフォーリンラヴした清姫が、
騙された事を知ってその身を蛇身に化しながら安珍を追いかける[道成寺]や、
蛙を食おうとしていた蛇に、戯れに「蛙を放せば嫁に行く」といった娘が、
本当に蛇に嫁入りを強要され、その窮を娘に救われた蟹が助ける話、
山で大きな蛇を殺した男がその祟りで病死した話など、それらを伝える伝承は多い。
また神話にも素盞之男命に倒された八俣遠呂智が登場する。
近年の研究ではこの伝説は中央政権による地方の産鉄集団を制圧するメタファーとされているが、
そうであるにせよ、荒ぶる自然と精鉄というテクノロジーを現す存在が
巨大な怪蛇であるところに深い興味を感じる。
これ以外にも各地で大蛇にまつわる伝承は、
自然の人為制御(主に治水など)が元となっているケースが多く、
現在でも地名となって残っていたりする。
河川や湿地が豊富だった我が国は、
そのむかし至るところで大蛇が躍動していたのであろう。
アオダイショウ[Japanese Green Rat Snake/Elaphe Climacophora]
○国内最大種とされる美蛇。
自然下では珍しいものの、豊富な餌が得られる飼育下では3mに達する例もあるらしい。
確かにドブネズミや成鶏を飲み込むケースもあるので、
他の国産蛇よりは大型になるようである。
飼育していると秋から春まで極端に食いが細くなる傾向があるようだが、
反面、夏期の食欲と代謝の早さは給餌に快感を覚えるほどである。
アオダイショウを語る上で外せないのが巳信仰で、
これは家屋に棲む蛇を神様のお使いや、化身とし、
家内安全、商売繁盛、金運向上などを願うもので比較的都市部でも残っている信仰である。
古来、我が国による蛇に対する認識は意外とアバウトで、
マムシを除いてあまり具体的に蛇の種類を指している記述は少ないが、
家屋に棲む蛇といえば、鼠や雀を食すアオダイショウしかいない。
私の家でも昔は家にアオダイショウが住み着き、
時折現われる事があったが、それは捕まえてはならぬと言われてきたし、
今でも神棚には白い蛇の石像が鎮座している。
こうした例は珍しくなく、“守り神”や“ヌシ”として扱い、祀るケースは全国に多い。
「蛇蝎の様に」と嫌悪される一方で、このような信仰の対象とされる両面性を備えた蛇は
現代においても、まだまだ神秘の存在なのであろう。
●幼少の頃にバケツから無造作に出された青大将を首にまかれ、
その肌触りと蠢く感触から蛇の虜となった思い出があり、今でももっとも好きな蛇の一つである。
欧米でも絶大な人気を誇るそうだが、
こんな素晴らしい蛇を日本人がリスペクトしないでどうするのか。
コーンスネーク等に比べて産卵数も少ないので、
国内でも殖やす方向に行けたら良いな、と密かに思っている。
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アカマタ[Oriental Banded Snake/Dinodon semicarinatus ]
○南西諸島に棲息する荒ぶる捕食者。
沖縄などでは[アカマター]と呼ぶんだそうな。
大型で、食性の幅が広く、かつ環境適応能力もある事から
棲息域ではハブと並んで生態系の上位を成す。
攻撃性も高いので、人間相手であっても執拗に噛みつきを行うためか、
ハブよりはマシであるものの、決して好かれている蛇ではないようだ。
飼育においても[荒い・堅い・慣れない]という三重苦を背負う孤高の蛇で、
あまりこれが好きだ、という人は多くない気がする。
幼蛇の頃の赤と黄と黒の美しいコントラストが成長と共に黒ずんで汚くなる、というのも
明かに不人気に拍車をかけているのであろう。
あまりにインパクトのある蛇な為か、
「沖縄では人間に化けて娘をかどわかす妖怪」と言われているが、
これは、元来、沖縄や南西諸島でも、
蛇は島の創生神話にも登場する精霊的存在であったが、
後にその地位が零落すると、共に我が国同様に
[蛇の婿入り]のような蛇を妖怪視する民話が生じ、或いは伝播し、
結果、それに登場する蛇がアカマタ(もしくはハブ)だっただけ、と考えた方が合点がいく。
[アカマタ(蛇)が人間の娘を孕ませる話]というのも、何も沖縄諸島のオリジナルではなく、
我が国の三輪山の神話を始めとして民間伝承にも類似する話は多く残るからで、
つまり、何もアカマタだけが怪しくて危ないバケモノであったのではなく、
沖縄文化における、言わば蛇の代表、顔役であったと思われる。
それだけ沖縄の文化の中でアカマタやハブの存在大きいかったのであろう。
また、ハブとアカマタの昔話は時にキャストの入れ替わりが見られ、
長生き(多くは千年)したアカマタが天に昇って竜となる伝説などは、
これがハブとなっていたりする場合もある。
ハブはその毒性において、もちろん特別視されていたであろうから
それをも食すアカマタもまたハブ害が甚大であればなお、
特別視され妖怪・精霊扱いされてもおかしくはない。
無毒の蛇ながらも、そのバイタリティ溢れる生態から、
沖縄文化の中でハブと並ぶ“地位”を得た素晴らしい蛇と言えよう。
因みに、同じ沖縄の八重山地方に伝わる豊穣神のアカマタ・クロマタとは関係ない。
●一般的には、まず間違いなく[素人にはお勧め出来ない]蛇であると思うが、
幸か不幸かド素人の時に手を出して以来、その魅力を知る。
“触れない”だとか“汚くなる”というような要素はデメリットでもなんでもなく、
いついかなる時あれ、荒ぶる魂を失わない個性に神威を感じれるのだから、
出来る事なら祠を造って祀りたいぐらいである。
長期的にはなろうが、CB化も狙っていきたい。
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トカゲ亜目
爬虫類の中で最も種のバリエーションが豊富な一群。
棲息環境においては、地を這い、樹に登り、宙を滑空し、海に泳ぎ、土中を潜るといった具合で、
地球環境をほぼコンプリート。
その生態も四肢で枝を掴んだり、体表の色を変えたり、歯牙に毒を備えたりと
3600余種の実力ここに在り、と云ったところであろうか。
どうも我が国では長い間、トカゲを有毒動物と論じてきたようで、
これは欧州にも見られるし、また中国でも暫しそう語られてきたのであるが、
特に、恐らくニホントカゲの幼体を指すのであろう[青蜥蜴]は猛毒と江戸期の博物書にある。
[トカゲ]なる名称は、[処蔭]すなわち草むらや石垣などの間に居る意であり、
生態的に甚だ正確な観察に基いた名称であるのだが、
どういう訳だか無毒である、と認識が変わり出したのは、ぐっと時代を経てからである。
一方で、毒があるので出食わしたら疾く(早く)逃げねばならない、という意で、
[疾駆け=トカゲ]という説もあるが、これは些か出来過ぎた気も。
緑星人[Green Iguana/Iguana iguana ]
○イグアナ科約700種の中でもっとも大きくなるであろう、
中南米にかけて分布するグリーンイグアナ。
イグアナという名称は西インド諸島のアラワク語で[トカゲ]を表す[イワナ]。
新大陸を発見した欧州人が一番目立つこのトカゲを[イワナ]と記したのが転訛したであろう。
なおアボリジニの言う[ゴアナ]はオオトカゲの意味で、
これはイグアナが転訛したものであるらしい。
ジャワではトカゲ全般を[レグアン]と呼び、
厳密に辿っていくと、どうも[イグアナ]と[トカゲ]の呼び名には確たるケジメがないように思える。
メキシコ最大の文明を築いたマヤ人の間で信仰された創造神の子であり
天と地、昼と夜、火と水、欲望と狂気、暗黒と創造を司る神様、
イツァム・ナーの[イツァム]はイグアナの意であり、
イグアナはイツァム・ナーそのものか、その化身、或いはこの神様の捧げ物とされた。
このイグアナの神様が、火や水といったもののシンボライズであるのは、
やはり好んで太陽の恵みを全身で浴びたり、
川辺の樹上から危険が迫ると水中にダイブして身を守ったりする、
イグアナの生態に起因するものであろう。
またイグアナは昔から盛んに食べられており、
現代でも、現地では蛋白源として養殖されている。
本来サイテスUで、かつ生き物の輸出には比較的厳しい中南米諸国に棲息するイグアナが、
斯様にペットルートで大量流通するのは、産業として殖やしているからであろうが、
我が国において、UFOキャッチャーに景品になってたりするその処遇を考えれば、
日本なんぞに来ずとも、現地でさっさと缶詰なり、ジャーキーなりになる方が、
同じ殺生と云えども、いっそ慈悲があるように思えるのだが。
因みに有名な恐竜のイグアノドンは“イグアナの歯を持つ”という意。
〜ドンという響きには怪獣っぽいイメージが定着したが、その示す言葉は“歯”である。
従って、黄金怪獣ゴルドンや、落書き怪獣ガバドンは、
“ゴルの歯”や“ガバの歯”を有す理屈になるのだが、
ゴールドの意味であろう[ゴル]は兎も角、ガバってなんだ?
●事情はどうあれ、こんなものを引き取ったのは、我が最大の失策と認めざるを得ない。
不思議な事に 一昔前の[ペット爬虫類]の代表種として全国でバラ撒かれ、
飼われる方は勿論、飼う方も、あれほど悲惨な末路を辿ったというのに、
未だに爬虫類を飼った事がない人から「飼いたい」という声を聞く。
当時と比べて比較にならない程の多くの爬虫類が出回ってるにも関わらず、
なぜにグリーンイグアナなのか???
相変わらず世間では[爬虫類のペット=イグアナ]なのか???
それとも日本人を魅了する“何か”を備えているのか???
「イグアナって慣れるんでしょ?」と聞かれたりするのだが、
“自閉気味の犬を長い年月をかけて家族の一員にする”ぐらいの気合がないと、
慣れないし、すぐ飽きると思う。
都市伝説的な情報によると、アホの坂田も飼ってるらしいが、
あの人のあれは芸風なので、決して[アホでも飼える]と思わないように。
ヤモリ科
ヤモリは人間社会において、比較的身近な存在であったにも関わらず、
他の爬虫類がそうであるように有毒生物として危険視されてきた。
トッケイの主棲息地域である東南アジアでは益あるものの扱いを受けたが、
欧州や、また中国でも種類によっては有毒扱いを受け、
様々な毒薬や薬品の材料にされており、
特に古い時代の中国ではヤモリに朱(硫化水銀)を食べさせ粉末にし、
これを女性に塗っておけば、他の男と情事を交わした時に消える、とされ、
浮気予防の薬として盛んに用いられた。
何を塗っても行為の最中に汗をかけば落ちそうなものだが、
これが妄説であると広まるのには暫しの時代を有したようである。
これはトッケイではなく他のヤモリであったそうだが、
トッケイも、雌雄の仲睦まじく淫靡な性質の主として、房中における秘薬の材料になっている。
因みに薬効は尾にあるとされたので、再生尾の個体は意味がなかったらしい。
薬効は情事にまつわる物ばかりではなく、肺病などにも効果あるとして、
現在でもトッケイは膨大な数が捕獲されているが、主に中国で漢方薬や薬膳食品になっており、
近年激減した国内産の穴埋めを東南アジア諸国からの輸入で補っているんだとか。
なお私も一瓶、米酒にトッケイが付けてある[ハアカイ酒]なる中国の酒を持っているが、
その裏書きには[心身の高揚、強精力に効果あり]とあって、
あちらではトッケイが精力剤として用いられている事が判る。
我が国において長きに渡りヤモリはイモリと混同されており、
ヤモリとイモリの民俗がごっちゃになっているケースが多い。、
本来中国伝来の[守宮(ヤモリを指す)]を[イモリ]と読んだりしており、
イモリの古語が[守宮]だという書や、ヤモリの古語がイモリという書もあって、
更にはヤモリとイモリは同じ種類と論じる書まであるので、甚だケジメがない。
従って、守宮と記されていても、
それが果たしてゲッコーを指すのかサラマンダーを指す定かではないのだが、
俗に言う、[イモリの黒焼きが惚れ薬になる]といった俗信のルーツは、
恐らく中国伝来のヤモリのまつわる薬効であろう。
トッケイオオヤモリ[Tokay Gecko/Gekko gecko]
○約84属670種に及ぶトカゲ亜目ヤモリ科の代表格であるトッケイヤモリ。
何せこのヤモリの咆哮から学名が付けられたのだから文句は有るまい。
ヤモリとしては大型な体躯、優れた適応力で広大な棲息域を誇る。
繁殖力はさほど高い訳でもないのに、現地によっては驚くほど姿を見かけるという。
だが、中国南部を始め、捕獲圧から個体数が激減してしまった地域もあり、
地域個体も豊富なヤモリだけに残念でならない。
トッケイと言えば、なんといってもその鳴き声であるが、
初めて聴いたらビックリするであろうと思われる。
特に[ヤモリは鳴かない]という認識を持つ我が国において、
例え闇夜に「トッケィ!」という奇声が響こうとも、それがヤモリから発された雄叫びとは思うまい。
どうもこれは社会行動の一環であるらしく、縄張り宣言であろうと察する。
昔の飼育書には[鳴き声を聴こうと思えば相当なスペースが必要]とあるが、
環境さえ適当であれば特大プラケースのサイズでも鳴く。
鳴くのは雄であるが、自家繁殖個体が生後9ヶ月ぐらいで鳴いたので、
成熟してなくても縄張りを持つに至るという事であろうか。
このトッケイの咆哮を用いた占いは、トッケイの分布域そのままに広く浸透しており、
とりわけヒンドゥー教徒の間で信仰されている習俗であるらしい。
神話によればインドの破壊神シヴァがトッケイに蝿や蚊を駆除する力を与え、
かつ未来を占う霊力を授けたという事になっている。
トッケイは破壊神の加護を受けしヤモリであるのだ。
●幼少の頃、動物図鑑の爬虫類の項目で、トッケイが載っていたのだが、
そこには、間違いなく[沖縄にもすむ]と書いてあった。
今から思えば大間違えなのだが、当時は本気で信じ込んで沖縄に行って、
このヤモリの咆哮を聴くの夢みたものである。
後になって、南の島であるバリでは、沢山のトッケイがロスメン(安宿)に現れては、
気侭に鳴いたり虫を捕食していると聞いて心が踊ったが、
では行こうと思った矢先、暴動が発生して渡航を禁じられてしまった。
奇しくも爬虫類を飼育するようになって初めて飼育したヤモリは、やはりこれ。
以後、幾種かのヤモリを飼育する機会に恵まれたが、やはりトッケイには及ばない。
何かしらの魔力のようなものを秘めているのかも知れない。
目下の目標はF3を出す事と、ある程度のデータをそろえる事である。
地域個体差は勿論のこと、サイズ、発色、繁殖などに至るまで、
あれだけ安価に流通していながら、資料の乏しさは嘆かわしい限りで、
少しでもその穴を埋めていきたい。
篭目 別館:トッケイについての雑感
篭目 別館:トッケイ飼育におけるワンポント
篭目 別館:真景 大守宮
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カメ目
原生爬虫類の中で最も古いグループ。
化石上では2億1500万年前(三畳期後半)に既に甲羅を持って出現している。
そのせいか他の爬虫類と異なり、無弓類に属する。
堅い甲羅を引っさげ、湿地、密林、草原、淡水、汽水、海水と様々な環境に適応し、
その眷属は約270種(亜種を含めると400種超)に及ぶ。
我が国において[カメ]は[カミ]の転訛であるとする。
かなり古い時代から神霊なるものとして扱われてきた。
その扱いは国家の行く末を占う[亀卜]などに代表されるが、
他にも年号、地名、人名、伝承など亀にまつわるものは多い。
カメは長寿、または瑞兆の証とされたので、寺社などの池に昔から飼われており、
現在、東南アジアの仏教国で行われているような寺院の池に亀を放つ[放生]も、
江戸時代には盛んであったらしい。
今でもそこらの河川や寺社の池などに、
飼い切れなくなった亀を捨てるが行為が絶えず問題になっているが、
恐らく、この[放生]という仏教観念と無縁ではあるまい。
日本人は亜細亜文化圏の影響もあって歴史的、文化的に亀が好きであるが、
これには在来種の亀が比較的大人しい種であった事も無関係ではないだろう。
唯一神経質なスッポンが亀とは別立てて妖怪視されている事からも伺える。
近年のミドリガメ、カミツキガメの帰化でこうした認識が変わる可能性もあり、
個人的には甚だ残念である。
ヨツユビリクガメ[Central asian tortoise/Testudo horsfildi]
○残念ながらリクガメ我が国には棲息しておらず、従ってそれにまつわる民俗がないが、
ギリシャやエジプトなど地中海沿岸付近ではポピュラーな存在であったため多くの伝承が残る。
イソップの寓話[ウサギとカメ]に登場するカメは無論リクガメであるし、
西洋弦楽器の基底とも云える竪琴は、リクガメの甲羅を用いて作られた。
神話では商業と盗賊の神様ヘルメスが、太陽の神様アポロンの牛を盗んで逃げている途中、
リクガメを見けると、甲羅に牛の腸を張って竪琴をこしらえ、
追ってきたアポロンは、その音色に魅せられて牛と交換にその楽器を得たという。
当時の竪琴はリクガメの甲羅を共鳴器として、山羊の角を腕木とし、羊の腸を弦にしたもので、
さながらそれ自体が合成獣のような趣さえ漂う。どんな旋律を奏でたのであろうか。
時代が下って現在に至るまで様々な弦楽器が生み出されたが、
いずれの楽器も共鳴器の部分はリクガメの甲羅を模倣したものである事を考えれば、
リクガメがその背負った棲家から人類に与えた恩恵は多大なものがあると言えよう。
中央アジアに広く分布するヨツユビリクガメは、
他にもアフガニスタンヨツユビ、カザフスタンヨツユビ、
トルクメンヨツユビなどの亜種がいるそうであるが、
そのうちカザフスタンとアフガニスタンぐらいしかお目にかかった事がない。
現在主に流通しているのはウズベキスタン産だそうな。
地域に拠っては半年近く冬眠をしている、という話なので、
下手すると日本にも帰化してしまいそうな感もあり、
現に[奈良の吉野で帰化している]という噂を聞いた事があるのだが、
多湿な環境に弱いらしいので、流石にそれはないかも知れない。
草原にハイキングへ行って、こんなのがノコノコ歩いていると、
それはそれで可愛らしい気もするのだが。(イタチに食べられて終わりそうだけど。)
●良く食べ、良く動き、良く眠る、しかも小型。
安価な分、軽んじられているようだが、小型リクガメの魅力満載であろう。
地味とか言われるが、リクガメなんて一部を除いて、似たような色彩なのになぁ。
繁殖方法は、まだ未確定な部分が多いんだそうが
このまま消費し続けると、そのうちにリストから消えるものと容易に推測出来る。
スペースさえ許せばペア飼育して繁殖に望みたいものなのだが・・・。
ニホンスッポン[Japanese Softshell/Pelodiscus sinensis]
○日本を含む東アジア一帯に分布するスッポン科のカメ。
産業化しているので、各地で養殖されいるの人為分布のケースも多いと思われる。
面白い事に、中国産のスッポンと日本産のスッポンだと、
種としては同じヒガシアジアスッポンでも、日本産の方が美味しいらしく、
中国では日本産のスッポンを養殖する業者も多いのだとか。
結果、逃げたスッポンが在来種と自然交配しているんだそうで、
そのうち中国産のスッポンも美味しくなるかも知れない。
スッポンは日本人の亀意識に相反する事が多い。
気性が荒く、噛み付いたら雷が鳴るまで放さない、等と言われ、
しつこい性質を[スッポンのような]と形容したりする。
執着心の強い事を間違っても[亀のような]とは言わない。
また「亀を食べる」というとギョとする人も多いが、
スッポンを食べる、となるとさほど違和感はなく、
むしろ高級食材で、我が国でもっとも食材として消費されている爬虫類である。
更にこれは大陸文化の影響もあるのだが、亀は昔から縁起が良く、あまりタチの悪い伝承もないが、
スッポンは妖怪視される事が多く、人に憑いたり攫ったりする話や、
河童が甲羅を背負うようになったのはスッポンの影響とする説すらあり、
どちらかというと食べる以外では好まれる存在ではなかったようだ。
従って、日本人はスッポンを亀と見なさず、別種の生き物のように捉えているのかも知れない。
河童とスッポンの関係は甚だ深く、
相当量のスッポンの情報が河童に流れ込んだといって良い。
スッポンは古い時代、[河伯使者]と呼ばれ、河の神様のお使いであったが、
歳月を経るにつれ、河伯信仰が衰えると次第に水中で人を襲う妖怪に零落した。
特に川の中で人を深みへと引き込み、肛門から生き血を吸い殺める、という伝承は、
そのまま尻小玉を狙う河童の残忍性へと継承されたと見ても誤まりではあるまい。
なおスッポンを漢字で[鼈(べつ)]と書くのは、
足を引きずりベタベタ歩く様をベツヘキという事から。
水棲に適応した体構造を観察した結果の命名であろう。
我が国の[スッポン]では[出没]からの転訛だとか、「スッポン」と鳴くから、とか、
諸説あるものの真相は不明である。
地方名では[マル]、[フタ]、[トチ]、[ダンガメ]、[ワガメ]、[団魚]などがあり、
例えば関西ではスッポン鍋の事を[マル鍋]と呼ぶ。
因みに鼈甲細工のベッコウは、漢字から分かる様に、本来は漢方薬に用いるスッポンの甲羅の意。
どうも中国から我が国へ伝わる際の幾つかのミステイクの結果、
海洋棲のタイマイの甲羅と混同が生じてしまい、そのまま定着したらしい。
余談だが、スッポンは精が付く食材とされ、
食べたのちは大変な事になるなど揶揄されるが、
これも半ば信仰に近いもので、特別な効果はないと思われる。
●スッポンは子供の頃から飼育しているので特別な思い入れがあり、
水棲のカメの中では群を抜いて好きな種である。
産業として確立しているので国内外で盛んに殖やされており、
流石に敢えて繁殖をしようとは思わないが、
大きな水槽で洗面器サイズまで育ててみたくてならない。
500円玉サイズのベビーも可愛いが、
首の太さが親指ぐらいに育ってからのスッポンは本当に迫力がありますよ。
ヌマヨコクビガメ[Helmeted mud turtle/pelomedusa subrufa]
○ヌマヨコクビガメはその名の通り、河川や湖沼に棲む曲頸亜目の亀なのだが、
その実、広い分布を誇り、亜種もアフリカヌマヨコ、クロヌマヨコ、エリトリアヌマヨコなどがいる。
特徴的なのは、まず食欲旺盛なその性質。
分布地では過酷な夏期になると夏眠をして過すんだそうだが、
よほど[食べれる時に食べないと死ぬ]というような環境なのであろうか。
従って餌で馴らせばすぐに人馴れしてくれるので飼っていて楽しいし、
基本的に偏食知らずなのも有り難い。
一見、漫画に出てくるタヌキのような間抜けた面構えながら
水面に降り立った水鳥を集団で襲い、水中に引きずり込んで貪ったりするらしい。
またカバなどの体表に寄生する蟲なども好んで食べたりするんだそうで、
時たま巨体に踏み潰される気の毒なものもいるんだそうな。
当たり前であるが、曲頸亜目の亀しか棲息していない文化圏では
首を横の曲げる亀がスタンダードであり、
昔話や童話などに出てくる亀も首をニョロリと横の曲げて収納する。
日本人などはナガクビガメ等を見て珍しく思うが、
あちらからすれば首を縮めて収納する亀こそ珍奇に映るに相違ない。
世界は広い。
●ネックとなるのはスペースのみ、という素晴らしいカメ。
餌をねだる際の激しい動きは愛敬があって見ていて飽きないものがある。
大型の飼育個体を他所で見た事がないが、甲長30cmにはなるらしい。
が、さほど成長が早いわけでもなさそうだ。
篭目 別館:ヌマヨコクビガメの学名にまつわる雑記
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